有名女優の夫も関与?タイで巨額暗号資産詐欺

有名女優の夫も関与?タイで巨額暗号資産詐欺

タイで暗号資産を巡る巨額詐欺事件が相次いで発生し、社会に大きな衝撃を与えています。プラチャーチャート・トゥラキット紙の報道によると、有名女優の夫や大手銀行系ベンチャーキャピタルの元幹部が関与し、その被害総額は数十億バーツに上るとみられています。

この記事の要約

  • 大手銀行系VCの元幹部がその地位を悪用し、海外投資家などから5000万バーツ(約2億5000万円)以上を詐取した疑いが浮上。
  • 有名女優の夫とされる実業家が、架空の暗号資産への投資を勧誘し、被害総額は13億バーツ(約69億円)を超えた。
  • 暗号資産市場の低迷を背景に、AI技術などを悪用した巧妙な投資詐欺が急増しており、タイ当局も警戒を強めている。

華麗なる経歴の裏の顔:大手VC元幹部の詐欺手口

最初の事件は、タイの大手銀行カシコン銀行のテクノロジー部門KBTG傘下にあるベンチャーキャピタル「KXVC」の元幹部、通称「ジョムKXVC」(本名:カムパナート氏)が主犯格とされるものです。同氏は、その輝かしい経歴と社会的信用を悪用し、著名な暗号資産プロジェクトの初期投資枠を個人的に確保していると偽って投資家を勧誘しました。被害者はタイ国内に留まらず、シンガポール、ベトナム、さらには米国にまで及び、判明しているだけで被害者は20名以上、被害総額は5,000万バーツ(約2億5,000万円)を超えています。事件を受け、KXVCは公式にカムパナート氏が既に退職済みであること、またファンドが個人投資家から直接資金を募ることはないと発表し、強く注意を呼びかけています。

被害総額69億円超!有名女優の夫による大規模詐欺

さらに深刻なのが、有名女優の夫である実業家A氏が関与したとされる大規模詐欺事件です。市民団体の代表者が多数の被害者と共に経済犯罪制圧局に告発したことで発覚しました。A氏は「WOWBiT」や「ACET ONLY」といった独自のデジタル通貨への投資を持ちかけ、「高いリターンが保証されている」と謳い、多くの人々から資金を集めました。しかし、出金の約束の期日になると「システムがハッキングされた」「国際的なマネーロンダリング規制に抵触した」などと弁明を繰り返し、支払いを拒否。被害総額は13億8,600万バーツ(約69億3,000万円)という驚くべき金額に達しています。A氏は過去にも詐欺容疑で逮捕状が出ており、現在はアラブ首長国連邦のドバイに逃亡しているとみられています。彼はSNS上で元首相などの要人とのツーショット写真を公開し、「タイで最も裕福な暗号資産専門家」という虚像を作り上げて信用させていました。被害者の中には、がん治療のために貯めた「最後の金」をだまし取られ、絶望のうちに亡くなった方もいると報じられており、その手口は極めて悪質です。

市場低迷が詐欺を誘発?巧妙化するサイバー犯罪

専門家は、こうした詐欺事件が多発する背景には、暗号資産市場の長期的な低迷があると指摘します。市場が冷え込むと、不正な資金繰りを行っていた詐欺プロジェクトが破綻し、犯罪が表面化しやすくなるのです。これは過去に世界を揺るがした「Terra LUNA」や「FTX」の破綻事例とも共通する構図です。さらに、犯罪分析企業Chainalysisの報告書によれば、詐欺師はAIによるディープフェイクや音声クローン技術を用いてCEOや専門家になりすます「なりすまし詐欺」といった、より巧妙な手口を使うようになっています。タイのサイバー警察の統計でも、オンライン犯罪による被害額は急増しており、2024年1月だけで約120億バーツ(約600億円)に達しました。その多くが暗号資産を介して追跡の困難な海外口座へ送金されています。

Thai-Picks View

タイでは近年、経済格差の拡大を背景に「一攫千金」を狙う投資話が後を絶ちません。特に暗号資産のような新しい金融商品は、法整備が追いついていない側面もあり、詐欺師の温床となりやすいのが現状です。日本の暴力団対策法のように組織犯罪への締め付けが厳しくなる一方で、犯罪組織は「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」のように実態を隠し、サイバー空間での詐欺や資金洗浄に暗号資産を悪用するケースが増えています。これは単なる投資詐欺に留まらず、銃器売買や人身売買といったより深刻な犯罪の資金源となっている可能性も指摘されています。

在タイ日本人がこのような被害に遭わないためには、以下の点を徹底することが極めて重要です。

  • うまい話はまず疑う:「有名人が推薦」「元政府高官と知り合い」といった権威性を利用した勧誘は詐欺の常套手段です。SNS上の華やかな生活や著名人との写真は簡単に偽造できると認識してください。
  • 高利回りの約束は危険信号:「元本保証」「月利10%以上」といった、あり得ない好条件を提示された場合は100%詐欺です。特に、企業の口座ではなく個人のウォレットへの直接送金を求められた場合は絶対に応じてはいけません。
  • 正規業者を利用する:投資を行う際は、必ずタイ証券取引委員会(SEC)に登録されている正規の取引所や業者を通じて行ってください。非公式なLINEグループや知人からの紹介、セミナーでの勧誘には絶対に乗らないでください。
  • 迅速に相談する:少しでも「おかしい」と感じたら、すぐに取引を中止し、専門家や警察に相談することが被害拡大を防ぐ鍵となります。

万が一の際に備え、以下の連絡先を控えておくことをお勧めします。

  • ツーリストポリス: 1155
  • サイバー犯罪警察ホットライン: 1441
  • 在タイ日本国大使館 領事部: 02-207-8500 / 02-696-3000

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