バンコク、ホルムズ海峡封鎖でタイ経済に深刻な影響懸念

By編集長

3月 28, 2026
出典:元記事

バンコク、ホルムズ海峡の長期封鎖がタイ経済に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。中東情勢の緊迫化により、エネルギー価格の高騰や海上輸送コストの増加が懸念されており、タイの国民生活や企業活動に広範囲な影響を与える可能性が指摘されています。クルンタイ銀行傘下の調査部門クルンタイ・コンパスの発表を、プラチャチャート・トゥラキットが報じました。

この記事の要約

  • クルンタイ・コンパスは、ホルムズ海峡の封鎖が3ヶ月間続いた場合、タイ経済とビジネスに3段階の影響が生じると予測しています。
  • 原油価格の高騰と海上輸送費の増加が主要な懸念事項であり、これがインフレとタイ企業の運営コスト上昇を引き起こすでしょう。
  • 一方で、中東地域の食料安全保障への懸念から、コメや鶏肉、缶詰ツナといったタイの主要な食料品輸出には新たな機会が生まれる可能性も示唆されています。

中東情勢緊迫化による原油価格と海上運賃の高騰

中東情勢の緊迫化とそれに伴うホルムズ海峡の封鎖は、世界の原油輸送の20%以上を占める主要ルートの遮断を意味します。エネルギーインフラへの攻撃も相まって、中東からの石油輸送が停止し、原油価格は急騰しています。クルンタイ・コンパスの予測によると、ドバイ原油価格は2026年3月から5月にかけて、1バレルあたり106ドルから140ドルに達する可能性があり、通年では平均92ドル、前年比で32%も上昇する見込みです。

タイは2025年に原油輸入の約60%を中東に依存しており、この原油価格の高騰は、国内の製油所の販売価格やディーゼル燃料の小売価格に直接影響を与えます。これにより、燃料コストの割合が高いタイのビジネス部門、特に運輸業や製造業のコストが増加し、国民の生活費も上昇する傾向にあります。

また、ホルムズ海峡の混乱は、紅海に通じるバブ・エル・マンデブ海峡を通る海上輸送にも影響を及ぼしています。タイからドバイのジェベル・アリ港への主要航路は停止されており、ヨーロッパ向けの航路では、多くの船会社が喜望峰経由の迂回ルートを選択しているため、海上運賃が以前より24%以上も高騰しています。米国やオーストラリア、ニュージーランド向けの運賃も4〜7%上昇しています。ただし、中国、香港、韓国、ベトナム、インドネシア、シンガポールといったアジア域内への運賃は今のところ大きな変動はありませんが、今後の状況が注視されています。

タイ経済への3段階の影響予測

クルンタイ・コンパスは、ホルムズ海峡の封鎖と中東での戦闘が3ヶ月間続く場合、タイ経済は以下の3段階で影響を受けると分析しています。

  • 第1段階:喫緊の懸念(2026年3月残り期間)
    プラスチック原料の不足が発生し、包装材を必要とする下流産業に影響が出ます。また、輸送障害により中東や欧米からの長距離旅行者の減少が懸念されます。
  • 第2段階:最大の懸念(2026年4月に注視すべき点)
    政府の補助金がなければ、ディーゼル燃料価格が1リットルあたり40バーツ(約200円)を超える可能性があります。これは燃料コストの高い産業に大きな打撃を与え、石油化学製品の生産停止により、タイの製造業で商品の不足が深刻化するかもしれません。
  • 第3段階:将来の懸念(2026年後半以降)
    電気料金は2026年9月から12月にかけて値上げされる見込みです。また、航空券価格が高止まりすることで短距離旅行の需要が鈍化する可能性があります。さらに、化学肥料の不足は農業生産に影響を与え、農産物の収穫量を減少させる恐れがあります。

食料安全保障で恩恵を受ける可能性も

中東情勢の混乱は、予期せぬ形でタイに新たな商機をもたらす可能性もあります。中東諸国は国内の食料需要の平均約37%しか生産できておらず、食料安全保障への懸念が高まっています。特に魚、コメ、鶏肉の自給率はそれぞれ3%、25%、78%と低く、これらの分野でタイは世界有数の輸出国として上位に位置しています。

もし状況が緩和され、輸送が再開されるか、タイ政府がイランと交渉して戦争中でも食料品輸送の機会を得られれば、食料安全保障の懸念から中東諸国はタイからの農産物や食品の輸入を加速させる可能性があります。2025年、タイは中東に約680億バーツ(約3,400億円)相当の農産物・食品を輸出しており、これはタイの農産物・食品輸出全体の約4.0%を占めます。しかし、エネルギーコストや海上運賃の上昇、戦争リスク保険料の増加、輸送時間の延長といった要因は、農産物・食品輸出業者にとって慎重なコスト評価を要する課題となるでしょう。

Thai-Picks View

タイの経済は輸出への高い依存度(GDPの約70%)と、エネルギーの多くを輸入に頼る構造のため、国際的なサプライチェーンの混乱や原油価格の変動に非常に脆弱です。今回の中東情勢によるホルムズ海峡の封鎖懸念は、その脆弱性を改めて浮き彫りにしています。食料自給率が低い中東諸国への食料輸出は一時的な好機となり得ますが、不安定な国際情勢下では安定した供給体制の維持が最大の課題です。

在住日本人にとっては、ガソリンやディーゼル燃料の高騰による物価上昇、特に物流コスト増加による食品や日用品の値上がりは避けられないでしょう。また、電力料金の引き上げや航空券価格の長期的な高止まりも家計を圧迫する要因となります。日々の生活で自家用車の利用を減らす、公共交通機関の活用を検討するなど、生活防衛策を講じることが重要です。

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