タイ政府は外国人観光客からの「観光税」徴収を本格化させ、さらに東部経済回廊(EEC)への大規模投資を呼び込み、ディズニーランド誘致を目指しています。この画期的な政策は、タイ経済の新たな活性化を狙うもので、主要経済紙Prachachat.netが詳細を報じました。
この記事の要約
- タイ政府は外国人航空旅客から1人あたり300バーツ(約1,500円)の観光税徴収を開始する予定です。
- 東部経済回廊(EEC)を「EECシティ」として大規模開発し、ディズニーランドや最新鋭のスポーツ複合施設を誘致する計画が進行中です。
- 観光税収は観光産業の振興、環境保護、外国人観光客への保険提供に充当され、UAEからの投資も期待されています。
外国人航空旅客に「観光税」300バーツを導入
タイのアヌティン政権は、外国人観光客からの「観光税」として1人あたり300バーツ(約1,500円)の徴収を開始する方針を固めました。この観光税は、新内閣発足後の最初の閣議で承認され次第、速やかに施行される見込みです。当初は「土地踏み税」と呼ばれていましたが、今後は名称が変更される予定です。
副首相兼交通大臣のピパット・ラチャキットプラカーン氏によると、この税金は空路で入国する外国人観光客のみが対象となり、陸路や水路での入国者には適用されません。これは、陸路・水路での入国者の多くが日帰り旅行者であるのに対し、空路での入国者は滞在期間が長く、その数も増加傾向にあるためと説明されています。この観光税は、2023年2月14日の閣議で一度承認されており、観光振興のための基金として活用されることが決定していました。
観光税収の使途:観光振興と保険制度
観光税によって得られる収益は、タイの観光産業の持続的な発展に充てられます。具体的には、観光地の環境保護や自然資源の回復、観光インフラの整備、観光産業の競争力強化、そしてマーケティング活動などに使用される予定です。また、重要な使途の一つとして、タイ滞在中の外国人観光客に対する保険の提供が挙げられています。これにより、万が一の事故や災害に遭った際の医療費や補償が賄われ、観光客はより安心してタイでの滞在を楽しめるようになります。これは、タイが観光立国として、訪問者の安全と満足度を重視している姿勢の表れと言えるでしょう。
この政策は、2008年観光政策法(2019年改正版)に基づき、国家観光政策委員会(T.T.C.)が観光管理・開発費用および外国人観光客への保険提供のために徴収を提案したものです。タイ国政府観光局(TOT)が国家経済成長の柱として観光を重視してきた歴史的背景からも、この基金の設立は理にかなった動きと言えます。
東部経済回廊(EEC)を「EECシティ」へ大規模開発
タイ政府は、国の主要経済特区である東部経済回廊(EEC)の大規模な発展計画を推進しています。既存のプロジェクトはすべて継続しつつ、さらに「EECシティ」構想の下、大規模なテーマパーク、スポーツ複合施設、病院、住宅地などを誘致する方針です。現在、開発に必要な土地の収用は完了しており、プロジェクト全体の管理運営を行うための新会社設立も検討されています。
EECはチョンブリー県、ラヨーン県、チャチューンサオ県の3県にまたがる地域で、タイの産業発展の要衝とされてきました。日本をはじめとする外国企業からの投資も活発で、製造業の輸出拠点としての地位を確立しています。今回の「EECシティ」構想は、製造業に加えて観光・サービス業を強化し、より多様な経済成長を目指すものです。
ディズニーランド誘致とUAEからの投資
EECシティ構想の目玉となるのは、総投資額約2,000億バーツ(約1兆円)と見込まれるディズニーランド誘致プロジェクトです。約3,000ライ(約480ヘクタール)の広大な敷地を予定しており、これは上海ディズニーランドと同規模で、アジアで4番目、アセアン地域では初のディズニーランドとなる可能性があります。タイ政府は既にディズニー本社に誘致の意向を伝えており、実現すれば年間約2,000万人の観光客増加が見込まれると期待されています。
ピパット副首相兼交通大臣は、このプロジェクトの調査・投資をタイ政府自身が行うとは限らず、アラブ首長国連邦(UAE)などの富裕層からの投資を積極的に呼び込む意向を示しています。UAEからの投資誘致は、EEC地域における投資ムードをさらに高めることが期待されます。
また、ディズニーランドと並行して、約1,000億バーツ(約5,000億円)を投じて多目的スポーツ複合施設も建設されます。これは15,000人収容可能な屋内施設、5,000人以上収容可能な会議室、総合的な水上スポーツ施設、世界最新鋭のサッカースタジアムなどを備える計画です。これらの大規模プロジェクトは、ウタパオ国際空港の容量拡大や3空港を結ぶ高速鉄道計画と連携して推進され、4年以内の完了を目指しています。ただし、カジノの設置は明確に否定されています。
F1プロジェクトは中止、エンターテイメント強化へ
当初検討されていたF1(フォーミュラ・ワン)国際レース開催のためのサーキット建設プロジェクトは、約400億バーツ(約2,000億円)という莫大な投資額と、年間1回というイベント頻度を考慮し、費用対効果が低いと判断され、中止されました。政府は、F1よりもディズニーランドのような世界レベルのエンターテイメント施設が、より多くの観光客と経済効果をもたらすと評価しています。
ディズニーランドの誘致構想が発表されて以来、他のテーマパーク事業者からもタイへの投資意向が示されており、タイのエンターテイメント産業が大きく飛躍する可能性を秘めています。
観光省と文化省の統合計画
タイ政府はまた、観光省と文化省を統合し、「観光文化省(Ministry of Culture and Tourism)」を新設する計画を進めています。一方、スポーツ関連業務は独立した「スポーツ・青少年省」として分離される見込みです。この組織再編は、約6ヶ月以内、つまり年内の完了を目指しており、観光と文化の連携を強化することで、タイの魅力をより一体的に発信していく狙いがあります。
Thai-Picks View
タイにおける観光産業は、国のGDPの約12%を占める基幹産業であり、政府は長年にわたり観光によって国家経済の成長を図ってきました。特に、東部経済回廊(EEC)は、製造業の中心地として発展してきましたが、今回のディズニーランド誘致や大規模スポーツ施設の建設は、観光とサービス業を新たな成長エンジンと位置付け、経済構造の多様化を目指すタイ政府の戦略が垣間見えます。JICAの協力による東部臨海開発計画など、過去の大規模インフラ整備の成功体験が、今回のEECシティ構想の背景にあると言えるでしょう。
在住日本人にとっては、空路での海外旅行時に年間数回発生する可能性のある300バーツ(約1,500円)の観光税は、わずかながらも旅行コスト増に繋がります。しかし、その税収が観光インフラの改善や緊急時の保険提供に充てられることを考慮すれば、より安全で快適な旅行環境が整備されるというメリットもあります。また、EECエリアにディズニーランドが実現すれば、バンコク近郊に新たなエンターテイメント施設が誕生し、家族連れや友人との休日の選択肢が大きく広がるため、生活の質向上に寄与する可能性も秘めています。