タイ経済の泥沼化:構造課題と解決策

この記事の要約
- タイ経済は2026年に成長が鈍化し、長期的な構造問題に直面しており、「泥沼」に陥る懸念がタイ中央銀行から示されました。
- タイ中央銀行のチャヤワディー・チャイアナン氏とペッチラット・ブンニャクナーコン氏が、2026年から2027年にかけての経済課題と対応策について解説しています。
- 中央銀行は、政策金利引き下げに加え、「素早い債務整理で再出発」や「中小企業信用強化メカニズム」といった具体的な金融措置を通じて、経済の構造問題解決を目指しています。
タイ経済の現状と課題
2026年1月17日、タイ中央銀行のチャヤワディー・チャイアナン氏とペッチラット・ブンニャクナーコン氏が、プラチャチャート・ネットの「銀行が語る」コラムを通じて、タイ経済の現状と将来の課題について見解を表明しました。
新年の幕開けにあたり、2026年のタイ経済は成長率が過去数年で最低の1.5%に鈍化すると予想されており、これは経済が新たな時代への移行期にあることを示唆しています。背景には、長年にわたり蓄積された構造的な問題と、国内外の新たな課題があり、経済の道のりは決して平坦ではないと警告されています。
2026年の経済を阻む要因
タイ経済は2025年にすでに「泥沼」にはまりかけた兆候が見られました。主な要因としては、輸出の減速が挙げられます。米国による関税措置への懸念から先行出荷が加速した結果、2026年の輸出成長率は12%から1%未満へと大幅に落ち込むと予測されています。
さらに、政治的な不安定さも経済に影響を及ぼしています。新政府の設立に伴う選挙期間の影響で、2027年度予算の承認が約1四半期遅れる可能性があり、その結果、政府支出の鈍化が見込まれます。
加えて、南部経済の中心地であるハジャイでの大規模洪水の影響も2026年まで続き、GDP成長率を約0.1%押し下げる要因となる見込みです。
2027年以降の展望と構造的課題
2027年には、輸出と政府支出が正常化し、観光業も回復することで、経済は緩やかながらも改善に向かうと期待されています。しかし、個人消費の伸び悩みや高水準の家計債務が引き続き経済の足かせとなる可能性があります。
タイ経済が直面している構造的な問題は、主に以下の3点に集約されます。
- 低い生産性:タイは旧来の産業に依存しており、電気自動車(EV)への移行や関連技術への投資が遅れています。例えば、自動車産業は依然として内燃機関車と関連部品の製造が中心です。また、観光業も新型コロナウイルス感染症以前の水準に回復しておらず、アジアの競合国に後れを取っています。
- 低い耐性:GDPの87%に達する高水準の家計債務が問題となっており、非公式な債務も根深い問題です。さらに、中小企業(SMEs)の債務も高く、その質も低下傾向にあり、民間部門の支出と投資能力を低下させています。
- 高い不平等:タイ経済は「K字型成長」を続けており、大企業は好調な一方で、SMEsは脆弱な状況にあります。全企業のわずか2%を占める大企業が全収益の83%を稼ぎ出しており、信用へのアクセスにも大きな格差が存在します。SMEsへの融資は13四半期連続で縮小しており、これは経済の不確実性と金融機関の融資姿勢が慎重になっていることを反映しています。
中央銀行による具体的対策
タイ中央銀行は、経済を「泥沼」から脱却させるための2つのアプローチを提唱しています。一つは経済の原動力を強化すること、もう一つは泥沼を浅くすることです。後者は主に国際経済状況や他国の政策に依存するため、中央銀行は前者に注力しています。
2025年には、中央銀行は政策金利を4回引き下げ、過去3年で最低水準となる1.25%としました。これは国民や企業の金融負担を軽減し、経済の「潤滑油」としての役割を果たすものですが、構造問題を抜本的に解決するものではありません。
そのため、中央銀行は金利引き下げと並行して、構造問題解決に向けた具体的な金融措置を強化しています。その代表的な2つのプログラムは以下の通りです。
「素早い債務整理で再出発」プログラム
このプログラムは、資産管理会社(AMC)が、個人向けで合計10万バーツ以下の不良債権(NPL)を買い取ることで、債務者が債務を完済または返済を再開できるように支援するものです。これにより、債務負担が大幅に軽減され、債務者は再び正規の金融システムにアクセスし、消費活動を活発化させることが期待されます。
「中小企業信用強化メカニズム」(SMEs Credit Boost)プログラム
財務省、タイ中央銀行、商業銀行が連携し、中小企業の信用リスクコストを補償することで、SMEs、特に潜在能力が高く明確な事業計画を持つ企業が融資を受けやすくなるように設計されています。これにより、SMEsは資金調達が可能となり、生産性と競争力を具体的に高めることができるようになります。
今後の展望と協力の必要性
これらの金融措置は、経済の原動力を強化し、特に多くの国民の所得向上と不平等の是正に焦点を当てています。中央銀行は今後も、特に基礎層の住民が正規の融資にアクセスできるよう支援し、融資システム全体の公平性を高める取り組みを継続する予定です。
しかし、中央銀行だけで全ての課題を解決できるわけではありません。タイ経済がこの「泥沼」を乗り越え、再び力強く成長するためには、全てのセクターが連携し、具体的な行動を起こすことが不可欠です。政府と民間が一体となって推進する「Reinvent Thailand」プロジェクトも、この目標に向けた重要な取り組みの一つです。
タイが再び以前のような成長速度を取り戻せるかどうかは、私たち全員の協力にかかっています。
最後に、皆様にとってこの辰年が実り多き「金の馬年」となることを願っています。
引用元:
https://www.prachachat.net/finance/news-1951844
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