タイの個人ローン市場は、中東情勢の緊迫化と物価高騰を受け、3年連続で縮小する見通しです。この厳しい経済状況は、消費者の支出行動と借入能力に大きな影響を与えており、プラチャチャート・ビジネス・ニュースの報道がその実態を明らかにしています。
この記事の要約
- アユタヤ・キャピタル・サービスズは、2026年の個人ローン市場が、中東情勢と高い生活費により最大4.2%のマイナス成長となると予測しています。
- タイ中央銀行のデータによると、2026年1月時点で個人ローンはすでに2%減少しており、これは消費者による借り入れの減少を示唆しています。
- 同社は、新サービスの「บัตรกดเงินสดフェーストチョイス(Krungsri First Choice Cash Card)」を導入し、若年層や新規顧客の獲得を通じて市場の活性化を目指しています。
中東情勢と物価高騰が個人ローンを圧迫
プラチャチャート・ビジネス・ニュースによると、アユタヤ・キャピタル・サービスズのマネージングディレクター、アティップ・シンポチャカー氏は、2026年の個人ローン市場が極めて厳しい状況に直面していると述べました。主な要因は、中東情勢の不確実性が原油価格を押し上げ、ひいてはタイ国内の生活費高騰を招いている点です。同社は、個人ローン市場が2024年の4.2%減、2025年の3.4%減に続き、2026年も最大4.2%のマイナス成長となると予測しています。
タイ中央銀行(BOT)の最新データでは、2026年1月時点で個人ローンは前年比2%減少しており、この傾向がすでに顕著であることが示されています。アティップ氏は、中東情勢が長期化しインフレが加速した場合、経済活動が停滞し、個人ローンは2024年と同水準の4.2%減に達する可能性が高いと分析しています。このため、タイの消費者は家計のやりくりに一層の困難を強いられることになります。
2026年第2四半期が市場の転換点に
アティップ氏によると、2026年第2四半期は、個人ローン市場と顧客の返済能力を測る上で重要な時期となるとのことです。第1四半期には政府が燃料価格を抑制していましたが、その後は段階的に燃料費、電気代、その他の生活費が上昇し始めるため、消費者の負担はさらに増大すると見られています。
NPL(不良債権)全体の比率は2025年末時点で3.7%に減少しましたが、アティップ氏はこの現象を「貸付残高が減少している中で不良債権も減っている」と指摘し、必ずしも良い兆候ではないと警鐘を鳴らしています。貸し出しが少なくなり、利用者が減っているために不良債権が減少しているだけとの見方です。現状では、多くの消費者がローンを必要としているにもかかわらず、厳しい規制基準、収入証明の困難さ、あるいは信用履歴の問題により、ローンへのアクセスが制限されています。
新サービス「Krungsri First Choice Cash Card」で顧客層を拡大
このような厳しい経済環境の中、クルンシー・コンシューマーのプレジデントであるアティット・ルジラワット氏は、新たな「บัตรกดเงินสดフェーストチョイス(Krungsri First Choice Cash Card)」を発表しました。このカードは、緊急時の現金引き出し(ATM手数料3%なし)や、提携店2万店舗以上での0%分割払い、さらにはVISA加盟店や主要オンラインプラットフォームでの分割払いなど、現代のライフスタイルに合わせた多様なサービスを提供します。特に、2026年3月1日から6月30日までに新規でカードを申し込むと、最長45日間金利0%での現金引き出しが可能となり、最大4,590バーツ(約2万2,950円)相当の特典も付与されます。
アユタヤ・キャピタル・サービスズは、2026年中にクルンシー・ファーストチョイスの新規顧客口座を20万件獲得し、前年比で10%の増加を目指しています。また、新規ローンも5%増加させる計画で、これは主に既存顧客(90%)と新規顧客(10%)からの成長を見込んでいます。特に、若年層や社会人経験の浅い層をターゲットとしており、試用期間の2ヶ月で18万件の取引、3億バーツ(約1,500万円)の融資実績があり、前年同期比で新規申込者が37%増加するなど、既に好調な滑り出しを見せています。
Thai-Picks View
タイ経済は、過去にも世界経済の変動(例えばイラク情勢の混迷や欧州政治問題)や国内の金融政策、家計債務問題といった構造的な課題に直面してきました。今回の個人ローン市場の冷え込みも、そうした背景からくるもので、単なる一時的な現象ではなく、賃金の伸び悩みや非正規雇用者の増加、そして政府の物価抑制策の限界が顕在化している側面があります。特にエネルギー価格の高騰は、タイ経済にとって常に大きな懸念材料です。
バンコクに暮らす日本人にとって、個人ローンの動向は直接的な影響は少ないかもしれませんが、物価高騰は生活費の増加として顕著に感じられるでしょう。政府による燃料価格や電気料金の補助金が終了すれば、家計への負担はさらに増します。日常の交通費や外食費、さらにはエアコンの使用など、あらゆる面で出費が増えるため、光熱費や食費の節約、また予算の見直しといった具体的な生活防衛策を講じることが重要になります。