タイ政府は中東情勢による輸送コスト高騰を受け、コメ輸出市場の多角化を加速しています。特に海上運賃や保険料の急騰がタイの輸出産業に影を落としており、新たな市場開拓が喫緊の課題となっています。プラチャチャート・トゥラキットが報じました。
この記事の要約
- 中東情勢の緊迫化により、海上輸送コストと保険料が40%以上急騰し、タイのコメ輸出に深刻な影響が出ています。
- タイ貿易局は、主要市場である中東向けの輸出が停滞する中、アフリカや中国といった新規市場の開拓を加速しています。
- 2026年のコメ輸出目標700万トン達成のため、政府間の合意(G2G)を通じた中国へのコメ供給拡大など、戦略的な動きを強めています。
中東情勢がタイのコメ輸出に与える影響
タイ貿易局のアラダー・フアン・トーン局長官は、米国とイスラエル・イラン間の紛争状況を注視していると述べました。ホルムズ海峡や紅海といった主要な海上交通路での緊張が高まり、輸送コスト、燃料費、運賃、さらに保険料の高騰を招いているためです。
多くの海運会社が紅海経由のスエズ運河ルートを避け、南アフリカの喜望峰を迂回するルートに変更しています。これにより、3月15〜30日の期間で運賃が40%以上引き上げられたと報告されています。
タイの年間コメ輸出量のうち、約134万トン(約200億バーツ、約1,000億円相当)が中東向けです。そのうち75%はイラクが占めますが、今年最初の2ヶ月でイラク向け輸出は前年比52.58%減の9.2万トンにまで落ち込みました。情勢が長期化し、ホルムズ海峡の航行問題が続けば、2026年の年間コメ輸出目標である700万トンから約100万トンが失われる可能性があります。
新たな輸出市場開拓と中国とのG2G交渉
貿易局は、既存の主要市場を維持しつつ、潜在的な新規市場の開拓を推進する方針を示しています。高付加価値米の輸出強化も視野に入れ、中東市場の一部を補う形でアフリカ市場への参入を検討しています。
中国政府とのコメ売買に関する政府間交渉(G2G)も活発化しています。最初のロットとなる4万トンは3月中に中国への出荷が完了する予定であり、4月中旬にはさらに5万〜6万トンのコメについて、中国の食品大手であるCOFCOとの交渉が計画されています。
現在のタイ産白米(5%)の価格は1トンあたり360米ドルで、ベトナム、インド、パキスタン産よりもわずかに高い水準にあります。
コメとキャッサバ輸出の現状と課題
2026年最初の2ヶ月間におけるタイのコメ輸出量は約115.3万トンで、前年比4.16%減となりました。輸出額は約6億5,100万米ドル(約202億バーツ、約1,010億円相当)で、15.45%減を記録しています。
これは世界的なコメ在庫量の多さによる価格競争の激化や、インドネシア、フィリピンといった主要輸入国による輸入制限政策が影響しています。また、バーツがわずかに軟化傾向にあるものの、依然として比較的強い水準にあることも、輸出競争力を低下させている要因となっています。
キャッサバ製品の輸出も、同期に総量90万トン、価値123億1,014万バーツ(約615億5,070万円)で、それぞれ32.33%減、27.24%減となりました。これは加工用の生産物収集期間と重なり、海外バイヤーの注文が滞ったためです。
しかし、中国とサウジアラビアの飼料産業からの需要に支えられ、圧縮キャッサバの輸出は2ヶ月間で7万トン、4億1,950万バーツ(約20億9,750万円)を記録し、それぞれ133.33%増、132.87%増と大幅な増加を見せました。
中東情勢により、昨年受注したキャッサバ製品の出荷が遅れる可能性はあるものの、貿易局は代替市場の開拓を進める方針で、2026年のキャッサバ製品輸出目標は600万〜700万トンと設定しています(前年実績は820万トン)。
Thai-Picks View
タイは日系企業を中心とした製造業の輸出拠点としての地位を確立してきた一方で、近年は賃金上昇による高コスト化や周辺国との国際競争激化、産業構造の高度化の遅れが課題となっています。今回の輸送コスト高騰は、こうした構造的な要因に加え、国際的なコメ価格競争や他国の輸入政策も相まって、タイの輸出産業の脆弱性を浮き彫りにしています。
在タイ日本人の生活においては、今回の輸出コスト増が間接的に国内の物価上昇、特に食料品価格に影響を及ぼす可能性があります。コメの国内価格は比較的安定していると報じられていますが、全体的な物流コストの上昇は避けられません。今後の食料品価格の動向に注意し、家計管理を見直すことが賢明でしょう。